べぐれでねが

-気が向いたらセシウムを検査するブログ-

ついに放出された汚染水、その時の福島第一原発内の詳細を可視化する(2023年9月撮影)

2023年8月24日それまで福島第一原子力発電所構内に保管されていた汚染水の海洋放出が開始された。福島県漁連、全漁連が海洋放出に反対する中での放出。2015年に県漁連と国、東電と文書で取り決めた「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という取り決めは一方的に反故にされた。写真は汚染水放出中のもの。中心の升のような形のものが『下流水槽』と呼ばれ、ここから地下トンネルを通過し、沖合約1km先より汚染水が放出される。(写真は記載がないものは2023年9月上旬撮影)

参考動画

(本記事にて紹介している写真や動画の、より詳細なものについては下記の動画にて公開しています。これまで公開してきたどの映像よりも原子炉建屋やタービン建屋等の詳細がわかるものとなっていますので、記事を読み終えた方は是非ご覧になってみてください。)

0:00 汚染水を放水口へと放出している様子
0:10 放水口の地点を直上からとらえた映像
0:45 希釈設備
1:00 中国から無償供与された『大キリン』の今
1:09 原発周辺の様子(汚染水タンクの保管場所について)
2:46 放射能汚染された車両の墓場についての詳細映像
8:15 原子炉建屋、タービン建屋周辺の詳細映像

記事の続き

東京電力の公開資料(公式ページより)

この矢印の水深12.6mの位置から汚染が完全には除去できていないままの処理水が放出される。(2023年2月撮影)

放水口上空からの写真。なお、写真の支柱(測量に使用される)は現在は撤去されており上空から放水箇所を撮影するのは困難である。(2023年2月撮影)

現在の汚染水の保管状況

写真は上空約2000mより。構内には汚染水を保管するためのタンクが多数設置されているのがわかる。

タンクの中には基準値を満たしているものもあるが、全体の約7割が基準値(告示濃度比総和)を満たしていないものであり、この写真左側のタンクのように基準値を100倍以上超過しているものも全体の約5%程存在する。(2023年9月現在)

汚染水放出時の流れ

赤矢印は敷地内に設置されている3種類の多核種除去設備(以下ALPS)。左側(海側、東側)から順に『高性能ALPS』『増設ALPS』『(既設)ALPS』と呼ばれ、これらや逆浸透等の二次処理が行われた後、青色で囲まれたK4エリアタンクに移送される。

K4タンク群で攪拌や測定を行い基準を満たしたものについては移送ポンプで海側の放水設備へと送られる。白いタンク群のすぐ左側の建物が移送ポンプである。

(東京電力の公開資料からの抜粋)

この図のように構内を長い距離をかけて移送されることから、移送中の漏洩についても懸念される。K4タンクから放水立坑までの距離は直線距離でも約800m。実際は図の赤線のように、直線ではなくジグザグルートで移送されるので、それよりもさらに長い距離を汚染水は移動する事となる。

放水の概要(東電の公開資料より)

希釈設備

構内を移送された汚染水は上記希釈設備にて海水にて希釈され下流水槽より放水トンネルへ流され、放水口から海へと放出される。

東京電力の公開資料より

希釈設備と周囲について

構内の写真と所感

汚染水の放出に伴い、中国は日本からの海産物の輸入を全面停止したのは周知のとおりだが、構内を見て得に印象的だったものがある。

記事をご覧になっている方はこれが何かご存知だろうか?この写真中央に写る黄色い車両は、原発事故が起きた当初、中国の三一重工から無償供与された巨大ポンプ車、通称「大キリン」である。当時、60m級のアームを持つポンプ車は中国しか生産しておらず、このポンプ車があったからこそ当時炉内への注水が成功したと言われている。一億円もする高価な巨大ポンプ車はメンテナンスが続けられ、いまもなお使用可能な状態で構内に保管されている。結果として、東京電力や日本政府は県漁連や全漁連のみならず、無償で助け舟を送ってくれた中国への恩を汚染水の放出という仇で返すこととなった。

福島第一原発周辺の上空2000mより地平線の彼方を望む。きれいな海。

汚染水は海洋へと放出され、この大海原に今後数十年といったスパンで汚染物質を垂れ流す。日本政府や東京電力は風評被害を強調するが、健康被害についての詳細な調査は行われることがない。汚染水の放出にあたり、実は風評被害ありきで実害が発生することは全くと行っていいほど想定されていないのである。かつ、実害が発生したとしてもその詳細をトレースすることは不可能である。

そして、もう一点大きな問題点を挙げたい。実は放水口付近からの汚染水の採取(サンプリング)については現行法では東京電力以外が行うことが難しいのである。市民測定所や大学でも採取・測定を行おうと試みているようだが、法律の壁に阻まれており直接の採取が難しく、東電や東電が依頼する分析機関の測定が妥当か?測定値の透明性が担保されていない状態である。東京電力と利害関係のない第三者機関や諸外国が、東京電力がうかがい知ることなく放出された汚染水を採取、測定できるようにしなければ、今後も中国を始めとする諸外国からの不信感は募るばかりではないだろうか?

それ以外で気になった個所

以前から何度か取り上げているが、原発の構内から出すことのできない、放射能汚染されれてしまった車両が敷地内に保管される。

 

今回その詳細な様子を、動画にて公開しています。実に異様な光景・・・

(こちらの映像)

 

それ以外では原子炉建屋・タービン建屋周辺の様子についてもかなり詳細な様子を動画にて公開しています。

これは、様々なノウハウの蓄積がもたらした成果とも言えます。

(こちらの映像)

撮影後記

9月の撮影では実際に筆者が操縦し、上空より撮影を実施。数年にわたり飛行訓練を続けた結果が実り、今回の撮影は大成功となった。写真右側に移るのは筆者の足。一度は福島第一原発の近くで墜落しかけたこともありましたし、飛行訓練中の事故で大けがをしたこともありました。そのほか苦労は山ほどありましたがやっとここまで来ることができ内心ほっとしております(;’∀’)

ご支援のお願い

この度の空撮については助成金に加え、測定室の寄付金や私自身の自腹での負担を加え何とか実施することができました。しかしながら、実際問題として、助成金のみで全体を賄うことは難しく、年間を通じて撮影を実施するためには助成金に加え最低でも50-100万円程の費用が必要となります。ですので、活動継続のためにぜひ皆様からのお力添えをお願いいたします<(_ _)>

クレジットカード(VISA,MASTER)による寄付

1,000円以上の任意の金額での活動支援が出来ます。今後の活動継続のため、ご支援をよろしくお願いいたします。

(全角での入力はエラーになるため、必ず半角でのご入力をお願い致します(_ _))

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注意事項

空撮については様々な飛行許可等を得た上で実施しています。安易に類似の行為を行ってしまうことで規制が強化され今後の取材が難しくなってしまう可能性もあるため、そういった行為はくれぐれもご遠慮ください。

謝辞

今回のプロジェクトの活動資金の一部は、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの 2023 年度助成により賄われています。今回はついに有人飛行での超望遠撮影を成功させ、福島第一原発の情報公開レベルをさらに一歩前進させることができました。アクト・ビヨンド・トラスト様、2023年度は一年間大変大変ありがとうございました。

併せて、このプロジェクトの成功は沢山の支援者様に支えられることで、福島第一原発の詳細を記録することができる唯一の市民団体として大きな役割を果たすことができました。たくさんの方の小さな力を大きな力に変え、お返しすることができたかと思っています。いつも支えてくださる皆様、ありがとうございました(^_-)-☆

それでは今日はこの辺で(*^▽^*)マタネ

めたぼ